マシニングセンタとは?NC旋盤とは何が違う?

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マシニングセンタサムネ

工作機械を紹介する上で欠かすことのできない機械の一つが「マシニングセンタ」です。今回は「マシニングセンタ」の種類や特徴、他の工作機械との違いを解説していきます。

1. マシニングセンタとは?

日本工作機械工業会ではマシニングセンタは以下のように定義されています。

「中ぐり、フライス削り、穴あけ、ねじ立て、リーマ仕上げなど多種類の加工を連続で行えるNC工作機械」

引用:日本工作機械工業会(https://www.jmtba.or.jp/machine/introduction/

上記の多種類の加工を実現しているのは、マシニングセンタの大きな特徴である「自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)」です。このATCに加え、NC装置に加工プログラムをセットすることで、工具の切り替えから加工までを人の手を加えずに進めることができます。

機械の構成によって横形、立形、門形などがあり、近年では、より複雑な形状を加工することができる「5軸制御マシニングセンタ」が普及してきています。

2. フライス盤、旋盤との違い

フライス盤との違い

フライス盤

マシニングセンタの似た機械として、「フライス盤」が挙げられます。違いとしては「ATC装置」が付いているかどうか、という点が大きく異なります。一般的なフライス盤・NCフライス盤には工具が1本しか付いていないため、別の加工(例えば、フライス加工からリーマ加工)を行う際は、工具の交換を人が行う必要があります。


NC装置とATC装置を搭載したことよって工具を自動的に交換できるようになり、生産性や加工精度だけでなく、安全性においても大きく向上したと言えるでしょう。

旋盤との違い

マシニングセンタやフライス盤は「材料を固定し、回転させた工具を当てて削る」のに対し、
旋盤は、「材料を回転させ、固定した工具を当てて削る」という大きな違いがあります。この違いから、マシニングセンタは角物の加工が得意であり、旋盤は丸物の加工が得意、と言えます。

また、旋盤とマシニングセンタを合わせた機械を複合加工機と言い、複数工程の加工を機械一台で終わらせることができます。

3. マシニングセンタの種類

立型マシニングセンタ

主軸が機械上部から下に向かって付いており、加工物、工具を3軸方向(X,Y,Z軸)に動かすことにより、取り付けた加工物を上から加工します。

上から加工を行うため、切削している状況を確認しやすく、重い加工物に対しても高精度に加工することができます。また、他の種類と比べて専有面積が小さいというメリットがあります。

一方、削った際に発生する切屑が排出されにくく、加工物を傷つけてしまう可能性があるため、切削油を強くかけるなどの対策が必要になります。

縦型マシニングセンタ
縦型マシニングセンタ

門型マシニングセンタ

主軸を支える部分が門のように見えるのが特徴で、立型と同じように、主軸が上部から下に向かって付いています。

こちらも立型と同じく3軸方向(X,Y,Z軸)に動かして加工を行いますが、X軸(奥行)方向に長く動かすことができるという特徴があり、大型部品の加工をする際に使われます。

門型マシニングセンタ
門型マシニングセンタ

横型マシニングセンタ

横型マシニングセンタは主軸が横方向に付いているのが特徴です。立型は3軸方向に動かしての加工でしたが、横型はテーブルを回転させるB軸が加わった、4軸方向(X,Y,Z,B軸)の制御が可能な物もあります。B軸が付いている機械であれば、4面に取り付けられた加工物を段取替え無しで一気に加工することができる、というメリットがあります。

また、横向きになって付いているため切屑も排出されやすく、加工面が傷つくリスクを抑えることができます。

一方、横から加工物を固定するため、重い材料を取り付けると治具が変形し、加工精度が落ちてしまう可能性があるため、重たい部品の加工には不向きとされています。

横型マシニングセンタ
横型マシニングセンタ

5軸制御マシニングセンタ

C軸を追加した5軸(X,Y,Z,B,C軸)での制御か可能なマシニングセンタのことであり、2つの回転軸を持っている点が大きな特徴です。

回転軸が追加されたことにより、難易度の高い複雑な加工もこなせるようになっています。また、回転させることで加工面を自由に変えられるため、一度の取り付けで完成品まで加工することができます。
一方、制御するためのプログラミングが難しく、細かい点に注意しながら作業を行う必要があります。

5軸マシニングセンタ
5軸マシニングセンタ

4.マシニングセンタを使った加工の種類

マシニングセンタはフライス盤の機能に加えて、より複雑な加工が可能な工作機械です。数値制御(NC)によって自動化され、主に金属部品の高精度な加工に使用されます。以下は、マシニングセンタでできる代表的な加工方法です。

  • ・フライス加工

マシニングセンタはフライス盤としての機能を持ち、平面加工、溝加工、面取り加工などのフライス加工を行えます。これにより、平坦な面や複雑な形状の切削が可能になります。

  • ・穴あけ加工

穴あけ加工はドリルを使用してワークに穴を開ける作業です。マシニングセンタでは、複数の異なる径の穴を高精度であけることができ、またリーマーを使って仕上げ穴も精密に作成できます。自動工具交換機能により、作業中の工具交換がスムーズに行われます。

  • ・タップ加工

タップ加工は穴にネジを切る作業で、ねじ切り加工とも呼ばれます。マシニングセンタはタップ加工も可能で、ネジのピッチや深さを自動的に制御できます。

  • ・3D加工

マシニングセンタは複雑な立体形状や曲面の加工が可能です。CADデータに基づいて、工具の軌跡を自動的にプログラムし、複雑な金型や部品の曲面加工が高精度で行えます。これにより、航空機や自動車の部品など、特殊な形状を持つ部品の製造が可能です。

  • ・ミーリング加工

ミーリング加工は、複数の工具を使って同一ワークで異なる加工を連続して行う方法です。マシニングセンタでは、フライス加工、穴あけ、ねじ切り、さらには複雑な形状の加工を一度の工程で行えるため、生産性が大幅に向上します。

5. まとめ

マシニングセンタは、「ATC装置(自動工具交換装置)」と「NC装置」の登場により、急速に発展してきた機械であり、5軸制御マシニングセンタの登場により加工の幅が大きく広がっています。
今回ご紹介したマシニングセンタの種類にはそれぞれ特徴がありますので、自社で加工される部品との相性を見極めたうえで、適切な種類・スペックの機械を選びましょう。

また、マシニングセンタで旋盤のような加工ができるのと同様に、NC旋盤においてもマシニングセンタのような加工を行うことができます。NC旋盤や複合加工機においても技術が発展してきていますので、こちらも検討してみてはいかがでしょうか。

中村留精密工業では、NC旋盤の機能と、マシニングセンタの機能を一つにまとめた「複合加工機」を提供しています。
機械の導入を検討されている方や、機械選びに困っている方は、お気軽にお問合せください。