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複合加工機の正しい選び方は?最初に確認するべき3つのポイントを紹介

「複合加工機」を導入しようと思った時に、どんな機械を選べばよいか分からないと言ったことを良く耳にします。ここでは、どのような複合加工機があり、どのようなメリットがあるのか、最終的にどう選定すれば良いかを解説します。

1. 複合加工機の種類

複合加工機とは、工具の自動交換機能(タレット形を含む。)を備え,工作物の段取り替えなしに、フライス削り、旋削、研削などの多種類の加工のできる数値制御工作機械のことです。

例えば、ターニングセンタベース複合加工機の場合は、NC旋盤にマシニングセンタの機能を追加した複合加工機のことを指し、マシニングセンタベース複合加工機は、マシニングセンタにNC旋盤の機能を追加した複合加工機のことを指します。最近では、3Dプリンターの機能や研磨機の機能、レーザー溶接機能を備えた複合加工機も登場しています。

2. 種類による違い

それでは、ターニングセンタベース複合加工機、マシニングセンタベース複合加工機はどのような違いがあるのでしょうか。

2-1. ターニングセンタベース複合加工機

NC旋盤をベースにマシニングセンタの機能(ミーリング機能)を付加した工作機械であり、ベースとなる機械はNC旋盤なので円筒物の加工が得意です。
旋盤用主軸が装備されている事により、加工物を高速回転させることができ、旋削の加工負荷にも十分耐えうることができます。旋削加工が終了後は、刃物台に付加したミーリングユニットにより工具を回転させることができ、旋削加工が終了した後にそのままミーリング加工を行うことができます。また、ミーリング加工時は、旋盤の主軸は角度割り出し軸として動作でき、0.001mm単位の高精度位置割り出しが可能です。

ミーリング加工例
ミーリング加工

2-2. マシニングセンタベース複合加工機

マシニングセンタをベースにNC旋盤の機能を付加した工作機械であり、素材取付テーブルに回転機構を持たせることにより旋削加工が行えるようにした機械です。
もともと回転テーブルは、位置割り出し用に開発されたものであり、旋削加工に必要な回転数や加工負荷に耐えられる構造ではなく、簡単な旋削加工ができるという点以外はマシニングセンタそのものになります。ターニングセンタベース複合加工機と比べ、テーブルが大きく加工範囲が広いため、大きい素材の加工に最適であり、素材セットは治具を使用することにより素材把握時のひずみが生じにくい利点もあります。

3. 選定時のポイント

それでは、どちらの複合加工機が良いのでしょうか?ポイントごとに確認していきましょう。

3-1. 旋盤加工メインか、マシニング加工メインか

まず初めに、加工したい製品の工程が旋盤加工メインとなるか、マシニング加工メインとなるかにより判断します。
旋盤工程が多いのであれば、ターニングセンタベース複合加工機、マシニング工程が多いのであれば、マシニングセンタベース複合加工機をそれぞれ選ぶのが一般的です。

3-2. 加工物の固定方法

加工物を固定する際に治具によるクランプが必要か、またはチャックで把握できるかという点も重要になります。いくら旋盤工程が多くてもチャックによる把握代がないような素材形状であれば治具を使用して取付け、マシニングセンタで加工する他ありません。

チャックの把握イメージ
チャックの把握

3-3. 工程集約できるか

選定の上では、作業工程をいかに減らせるか、も大きな決め手にもなります。
最近の傾向では、従来マシニングセンタで加工していた製品をターニングセンタベース複合加工機で加工したいという事例が増えています。大きな理由の一つとして、ターニングセンタベース複合加工機は、対向2主軸型が主流であるため、1工程の加工が終了した後、対向するもう一つの主軸に自動的に受け渡すことで全面加工が可能となり、素材の着脱作業を省略することができる、という点があります。

対向2主軸型
対向2主軸型

一方、マシニングセンタベース複合加工機は、自動受け渡し機能がなく、素材を取り付けた基準面(素材取付面)は加工できないため、必ず2工程への素材着脱が発生します。しかし、最近では同時5軸制御マシニングセンタを使用して加工方法を工夫し、1工程でほとんどの加工を終わらせてしまうような工法も採用されています。ターニングセンタベース複合加工機で振れないような大きいワーク、異形状でクランプが難しいワーク、回転バランスが悪いワークなどの加工に最適な機械です。

4. まとめ

複合加工機を選定する際に重要になる点、それは加工内容に合っているか?工程集約が可能か?ということになります。
加工内容が合っていなければ機械性能を十分発揮できませんし、工程集約ができなければそれはNC旋盤、またはマシニングセンタを購入したと同じになってしまいます。
どこの範囲までを工程集約するのか、機械仕様は合っているのか、加工精度が維持できるのか、などを検討し、どちらの複合加工機が良いのかを最終判断します。2つのタイプの複合加工機のどちらが良いか方向性が決定したら、より細かな機械選定へと進みます。
次回はさらに細かい選定内容についてご紹介いたします。