工作機械の剛性とは。いい機械って何だろう?

1.工作機械の剛性とは

剛性とは、一般的な意味では外力に対する変形のしにくさを言います。
工作機械においてはそれに加え、機械の頑丈さや加工精度の安定性といったニュアンスを含んだ意味で使われることが多いようです。剛性の高い機械は良い機械の必須条件のひとつ、といっても過言ではないでしょう。

ワークが重量物や大型である場合、機械が保持する力も多く必要になります。この時に剛性が十分でないとワークの重さによって機械自体に歪みが発生し、加工精度に影響が出ます。

重力や質量など、止まった状態で働く静的な力に対する剛性は静剛性と言います。ウエイトリフティングの選手がバーを保持するイメージに近いものがあります。

静剛性のイメージ

また、切削加工では物を削る力に対し、同じだけ抵抗力として返ってきます。(作用・反作用の法則

切削条件に無理があったりワークが硬い材質であれば抵抗は大きくなり、十分な剛性がないと振動や機械への負荷が大きくなります。振動が大きいと加工精度が出ない・安定しないということが起こりやすくなり、機械への負荷が大きいと破損や故障などの不具合が起こりやすくなります。

モーターによる動きや回転のように、加速・減速したり向きが変わるような動的な力に対する剛性は動剛性と言います。バレーボールでのレシーブのイメージに近いものがあります。

動剛性のイメージ

剛性は機械の構造的なスペックともいえるものです。
加工精度は切削条件やワークの材質などさまざまな要因が影響しますが、これらの条件を整えても根本的に剛性が低いと良い精度は出ません。逆に剛性が高ければ、重切削であっても許容範囲であれば加工精度に影響が出にくくなります。

重切削とは?

一言でいうと切削条件をハードにした加工のことです。
切削速度を上げたり送り量や切り込み量を多くするなどして、多少負荷が大きくなっても安定して加工することを目的としています。

2.剛性の高い機械はなにがスゴい?

重量

重量は重いほど安定性が増し、剛性の向上につながります。
上記で挙げたウエイトリフティングやバレーボールにおいても、上手い下手は関係なしにやせ型の人と恰幅のよい人とで比較すると、後者の方がふらついたりしにくく安定感があるかと思います。

重心

重心は物体の質量の中心となる点のことです。重心は低いほど安定性が増し、剛性の向上につながります。

設計構造

一例としてコラムの取り付け角度が挙げられます。
ベース(土台)に対し垂直に取り付けるのと角度をつけて取り付けるのとでは、前者の方が安定します。

コラムとは?

コラムとは柱となるユニットのことで、ここではY軸方向に移動する主軸工具やタレットを支える箱型構造物を指します。

各部品の精度や品質

機械は多くの部品から成り立っており、ひとつひとつの精度や品質が悪ければ稼働時にわずかなガタやズレが生じて剛性に影響が出ます。

精密な部品のイメージ

3.剛性と使い勝手のバランス

重量や重心の特性だけを見ると、とてつもなく重くて重心がなるべく地面スレスレに来るように作れば剛性の高い機械にはなるでしょう。しかしそれでは使い勝手はとても悪いものになります。

重心が地面に近いということは主軸やワーク、タレットなどもそれだけ下に位置するということになるので、
大型のワークや長さのある刃物での加工がしづらく、寄り付きも悪くなります。

寄り付きとは?

刃物(タレット)と主軸との距離や、機械正面に立つ作業者から主軸までの距離のことを言います。寄り付きが良いというのは前者では作業者の負担が軽く、後者ではより根本まで接近できる=隅々まで加工できる、というような意味になります。

コラムの角度においても、角度をつけることによって寄り付きを良くしたり、機体や機内がコンパクトになるといったメリットもあるので一概に垂直にすべきというものではありません。

工作機械のコラムの取り付け角度
左は垂直に取り付けられたコラム、右は角度をつけて取り付けられたコラム。

4.最後に

工作機械では丈夫さや精度の安定性はもちろん大事ですが、何をどんな風に加工したいかという本来の目的も達成されなければなりませんし、使い勝手・効率の良さ・コストなど様々な観点での性能が求められます。これらを総合的にクリアして初めて、良い機械と言えるでしょう。