錆とは、金属の表面に起こる変色・腐食した組織をいいます。
材質・形状・環境によって色味や形態はさまざまなものがあります。
Contents
1.錆が起きる原因
空気中には酸素と水分が含まれており、これらは金属と化学反応を起こして酸化し、酸化物となります。
特に赤錆においては酸化は時間とともに内部に進行し、表面上に堆積し、やがて剥がれたり穴が空くといった現象が起きます。
酸化は酸素と水分のほか、塩化物、硫黄などを含む排ガス、埃や汚れによっても促進されます。
・雨水や潮風にさらされる環境
・湿気の多い梅雨の時期
・粉じんや排ガスの多い環境
・素手でふれる
・塩素系の洗剤、薬剤がかかる
などは、特に錆が発生しやすい条件といえます。
また、もらい錆といって、錆びていない部品が錆びている部品にふれると錆が移ることもあります。この場合はそれ自体が錆びにくい材質であっても表面に付着してしまいます。
2.錆びやすい金属、錆びにくい金属
錆は酸化によって起こるもので、酸化は金属のイオン化によって起こります。つまりイオン化しやすい性質の金属は錆びやすいということになり、このイオン化のしやすさをイオン化傾向といいます。
この表を見ると鉄は特別錆びやすい金属というわけではありません。しかし日本のような雨が多く湿度が高い地域では発生しやすいこと、鉄・鋼は他金属を圧倒する利用率なので目にする機会が多いこと、赤錆は目立つことから錆びやすいイメージを持たれるのかもしれません。
最もイオン化傾向の小さい金は水・酸・熱に対しても強く、それゆえに歴史的な建造物や作品の装飾などに使われていたり、永久的な存在を示すことから価値があるとも言われています。しかし宝飾品などで用いられる金はほとんどが合金であるため、この場合は錆びます。
イオン化傾向の大きい金属は常温の空気や水に対しても反応してしまうため、単体よりも別の物質と合金として使用されることが多くなります。
3.さまざまな色の錆
赤錆
鉄・鋼に発生する錆です。一般的に錆と言えばこれを指し、日常生活においても目にする機会が多いものです。その他の錆は有益な効果があるのに対し、赤錆は基本的に害であり、外観の悪化や形状の劣化を引き起こすものです。
白錆
アルミニウム・亜鉛に発生する錆です。腐食は表面だけのものであり、むしろ赤錆を防ぐとも言われます。
しかし外観上好ましくないため、わざと発生させたりするものではありません。
青錆
銅・真鍮に発生する錆です。青と緑を混ぜたような色であることから青緑(ろくしょう)とも呼ばれます。色合いが美しく赤錆の発生を防ぐことから、銅像などでは青錆が発生する前提であったり、青錆が促進される塗料が塗られることもあります。
黒錆
高熱を加えたり薬剤による化学反応で意図的に発生させ、自然に発生しない錆です。黒錆を起こす処理は黒染め加工、アルカリ着色などと呼ばれます。赤錆を防ぐ目的から機械部品の他、工具、刃物、鉄鍋といったものに行われます。
4.さまざまな形の錆
錆は金属の材質、形状、置かれた環境などによってさまざまな形で発生します。
全面腐食
その名の通り全体的にびっしりと発生する錆で、耐食性の高くない金属で起こりやすいものです。
部分腐食
金属の一部分に点状に起こる錆で、孔食とも言われます。耐食性の高い金属が錆びやすい条件下にある時、不動態皮膜(一部の金属が持つ耐食性のある膜)などの耐食作用が追い付かず起きる現象です。
また、部分腐食は形状、製造過程、他金属の影響によっても起きます。
すきま腐食
その名の通りすき間で起こる腐食です。不動態皮膜が機能するためには酸素が十分に供給される必要があり、接合部、狭く入り組んだ部分、埃や汚れなどが積もったりすると錆びが起きやすくなります。
溶接部の腐食
溶接部など高温で熱された部分は不動態皮膜の機能が弱まってしまうことと、焼け取り(焼け跡を除去すること)が不十分であると錆が起きやすくなります。
異種金属接触腐食
イオン化傾向の小さい金属がイオン化傾向の大きい金属と接触しており、イオンが乱れて起きる錆です。
5.錆を防ぐには?
拭き取り、洗浄
水気、手で触れた跡、埃や汚れなどを布で拭き取ったり洗い流す方法です。他の防錆方法を行うにしてもまずはこれを行うことが多く、基本的な対処法です。
防錆効果のある塗料、スプレー、シートなど
液状や気体になった防錆油や防錆効果のあるガスを発生するシートで対象を覆い、空気に触れないようにする方法です。手軽ですが時間が経てば効果が無くなるのと、触れれば取れてしまうので、加工の前後や保管・運搬時など一時的な使用が主になります。
除湿、乾燥
酸化に影響する水分を極力取り除く方法で、エアコン・乾燥庫などの大型のものから小袋にはいった乾燥剤までさまざまなものがあります。対象への影響が少なく拭き取ったりの手間もありませんが、その空間や梱包の中だけの対処です。
耐食性のある金属・材料の使用
金属としてはクロム、モリブデン、チタン、ニッケルなどがそうで、材料としてはステンレスやクロムモリブデン鋼などがそうです。これらの金属は不動態皮膜を形成し、手でふれることが多い用途でも有効的ですが、例えばステンレスは塩素イオンによる腐食には弱く、もらい錆も防げません。
メッキ加工
耐食性のある金属で覆う方法です。クロムメッキ、亜鉛メッキ、金メッキなどさまざまなものがあり、耐食性だけでなく見た目の向上を兼ねていることが多くあります。ただし傷が付けばそこから錆びる可能性はあります。
6.まとめ
金属を使ったものづくりにおいて錆びへの対処は欠かせない工程です。いくら精度や機械的性質が良くともすぐに錆びてしまえば使い物にならないでしょう。それぞれの金属の性質や、錆の起きやすい条件を理解することはとても大切なことです。