加工不良はなぜ起こる?原因と対策を解説!

1.加工不良とは

加工不良とは図面指示通りの形状や精度にならなかったり、加工を中断せざるをえない状態を言います。

加工不良が起きてしまうとさまざまなデメリットが発生します。

・精度やはめ合いが悪くなる
・やり直しや修正が発生し、工数がかかる
・見た目が悪い
・作業者や利用者がふれると怪我をする

2.バリ(カエリ)

加工した材料の端にささくれのような突起が出来たり、ギザギザした形状になる現象です。

バリ(カエリ)のイメージ図
バリが起こる原因

特に金属では延性・靭性・塑性などの性質を持ったものが多くあります。

延性・・・力を加えると延びる性質
靭性・・・粘り強さであり、変形しやすさを表す性質
塑性・・・力を加えると変形し、力を取り除いても元に戻ろうとしない性質

これらの性質を持った金属は、例えばハンマーで叩いても粉々になったり割れたりするということはなく、歪んだり凸凹したりなどの変形が起き、放っておいてももとには戻りません。

切削においては延性が作用して切断しきれなかったり、靭性や塑性が作用して切れるのと同時に逃げるように伸びてしまった部分がバリの原因になります。

プレス加工を利用した商品
プレス加工は、逆にこれらの性質を上手く利用したものです。
バリ対策

刃物の見直し

切れ味が良く鋭いものにする、刃先がこぼれにくいように強度の高いものにする、刃の当てる角度を変えてすくい角を大きくする、などが有効とされています。

切削油の見直し

摩擦や摩擦による熱が大きいと切断がスムーズにいかなかったり変形が起きやすくなります。ドライ加工よりはウエット加工の方がバリは発生しにくく、油の量や粘度などの性質も影響します。

切削条件の見直し

回転数、送り量、切り込み量によっても刃物への負担や材料も変形しやすさが変わるので、調整します。

設計の見直し

例えば直角よりも丸みのある角の方がバリは発生しにくくなるので、可能であれば直角を避けた設計を心がけると良いでしょう。

バリ取りを行う

材料の性質や加工上バリの発生が避けられないものである場合、加工後にバリ取りを行います。

砥石・やすり・ベルト研磨などはバリの部分だけを削りとり、全体の精度に影響なく綺麗に仕上がりますが、ひとつひとつ処理しないといけないため手間がかかります。反対に、バレル研磨やブラスト研磨などは全体的に削り取るため精度に影響しますが、多数をいっぺんに処理できます。

また、CNC機・複合加工機ではバリ取りの処理のプログラムを加えることも出来ます。

研磨方法についてはこちらで詳しく解説しています

💡バリの語源ってなに?

バリは英語のburr(発音はバー)からきており、意味もそのままギザギザ・突起を意味します。

3.コバ欠け

加工した材料の端が細かく欠ける現象です。

コバ欠けのイメージ図
コバ欠けが起こる原因

ねずみ鋳鉄など靭性が低くもろい材料の加工や、機械に振動が発生している場合に起きやすくなります。

コバ欠け対策

材質の見直し

可能であれば靭性の高い材料に切り替えます。

機械の見直し

機械に振動が発生している場合、精度不良・整備不良がないかの確認やメンテナンスを行います。

切削条件の見直し

振動が切削条件から影響を受けているものであれば、切削条件に難がないかを見直します。

💡”コバ” ってどういう意味?

コバは切断面を意味します。
もともとは木を裁断したときの断面の木の端=コバから来たと言われています。

4.チッピング

刃物の刃先(チップ)の一部が欠けてしまう現象です。

チッピングのイメージ図
チッピングが起こる原因

刃物の材質が適正でない、負荷が大きい、構成刃先が起きている場合に発生しやすくなります。また、機械への取り付けが甘かったりガタが発生している場合にも発生することがあります。

チッピング対策

刃物の見直し

靭性の高いものや、構成刃先の起きにくい材質の刃物を利用します。

切削条件の見直し

負荷が大きい場合には切削速度・送り量・切り込み量を減らすなどをし、構成刃先が発生している場合には逆に増やすなどして調整します。

機械の見直し

取り付け方法や治具などが適切であるか、機械にガタがないかを確認します。

5.切粉絡み

加工時に排出される長い切粉がワークや工具に絡みつき、傷がついたり動作が停止する現象です。

ワークや工具に切粉が絡んだイメージ図
切粉絡みが起こる原因

延性のある材料(アルミ・ステンレス・銅など)に起きやすく、切削条件によっても発生します。

切粉絡み対策

切削条件の見直し

切削速度が速い、送り量や切り込み量が少ない場合に発生しやすくなるので調整します。

チップブレーカーを利用する

刃物の刃先(チップ)に溝や突起がついており、切粉を切削しながらカットしてくれる仕組みを持った刃物です。ただし切削条件や加工方法が適切でないと、うまく機能しないことがあります。

揺動切削機能を利用する

サーボ制御により刃物を振動させ、切粉を細かく分断させる切削方法です。機能が搭載された機械であれば、プログラムで指定して利用することが出来ます。

6.まとめ

このように加工不良は刃物・材料の材質、切削条件、加工方法機械の状態や取り付け方などさまざまな要因が関係します。時には複数が絡んでいて特定に時間がかかる場合もあります。

切削条件のそれぞれをどう変えるとどう作用するのか、刃物や材料の材質の特性などを正しく理解しておくと、解決までの道のりがスムーズに進むでしょう。