「ポイントを抑えると難しくない?!」NC旋盤のプログラム【第二弾】

1. はじめに

第1弾ではNC旋盤の指令コードGコードとMコード、座標系について解説しましたが、第2弾ではNCプログラムの基本構成、座標計算について解説します。ここから本格的にNCプログラムの内部について解説が始まります。機械を動作させるために必要な指令の並べ方、意味を解説します。

2. NCプログラムの基本構成

NCプログラムの配列は、特別なルールがある訳ではありませんが、必要な指令が必要な時に与えられていれば、指令の順番はあまりこだわりがありません。初期に必要な指令を与えた後は、刃具を動作させる動き(座標)を順に並べることで加工の動作ができるようになります。

一般的なNC旋盤プログラムの基本的な構成を示します。○の部分に適切な数値を入力すれば初期設定は完了します。ここで、基本構成は2パターンあるということを覚えておきましょう。この2つのパターンを状況に合わせて使い分けるだけで、旋削加工のプログラムの骨組みが完成します。

基本構成

O○○○○(BASIC PRORAM)
N○ G○○ M41
G50S○○○○
G00G40G○○G99T○○○○S○○○○M03

パターン1(周速一定制御使用)

①O1000(SAMPLE PROGRAM)
②N1 G54 M41(O.D.ROUGH)
G50S2000
④G00G40G96G99T0101S150M03

パターン2(回転数一定制御使用)

①O1000(SAMPLE PROGRAM)
②N1 G54 M41(O.D.ROUGH)
④G00G40G97G99T0101S150M03

この2パターンの違いは、周速一定制御を使用するかしないかでどちらのパターンを使用するかを決めます。見た目はほとんど同じですが、違いは「③:G50S2000(最高回転数設定)」が指令されているかということ、もう一箇所「④:G96(周速一定制御)とG97(回転数一定制御)」のどちらを使用するかという点です。

加工する径の大きさの変化が大きい場合は周速一定制御を使用し、ドリル加工やネジ切り加工のように、加工中に回転数を変化させてはいけない場合は回転数一定制御パターンを使用します。周速って何?という方は、“G96周速一定制御”項で詳しく解説しています。

Point!

・周速一定制御・・・・加工径が大きく変化する場合に使用
・回転数一定制御・・・加工中に回転数を変化させてはいけない場合に使用

それでは、内部を詳しく見てみましょう。

①O1000(SAMPLE PROGRAM)

NCプログラムの始まりはプログラム番号という“O(オー)”から始まります。最近ではフォルダー名をプログラム番号として使用できるNCもありますが、基本は“O”になります。番号は4桁で指令し、その後に丸カッコでプログラムの名称や図面番号などを記入します。

N1 G54 M41(O.D.ROUGH)

次の行は、“N”で始まる番号を使います。これは、シーケンス番号というもので、「工程の番号」などとも呼ばれています。例えば、N1工程は外径荒加工、N2工程は外径仕上げ加工のように各工程を番号で表すことで、途中からスタートする際に区切りが良い目印として使用できます。

“N”もプログラム番号と同じく4桁の数値で指令し、丸カッコで工程の名前などを記入することができます。“O”番号も“N”番号も必ずコメントを記載する必要はありませんが、後でわかりやすくするためにはコメントを入れておくことをお勧めします。

次に同一行に加工原点を示すG54を指令します。この加工原点は第1弾でも解説していますが、G54~G59 最大6つまで設定することができ、この6つの原点のうちどの加工原点を使用するかを指定します。通常は、機械の電源を入れた際にはG54が設定されています。サブスピンドルが搭載されている機械で加工する場合はメインスピンドルは“G54“サブスピンドルは“G55”のように主軸毎に加工原点を設定し、使用します。

M41(主軸選択)は、複合加工機の場合、旋盤の主軸は回転軸と角度割り出し軸の両方の機能がありますので、主軸として使用するのかM91角度割り出し軸(C軸)として使用するのかを選択します。

G50 S2000

周速一定制御を使用する場合は、G50(最高回転数設定)で主軸がこの工程で回転することができる最高回転数を設定します。G50に続く“S“4桁で最高回転数を指令します。必ずここで設定した回転で回るということは無く、加工で回転させることができる上限の回転数を設定するという事です。使用するチャックや素材を把握している状況により回すことができる回転数が異なりますので安全な回転数を設定する必要があります。

準備機能“G”コード(④G00G40G96G99~~~)

加工工程開始後、初めに必要な準備機能を指令します。基本的なものは機械の電源を入りにした時点で設定されていますが、ここでは、この加工工程に必要な準備機能を確認のために再設定します。これは、万一以前に指令したGコードが残っている場合でも、加工初めに再設定することで違う動作になる事を防止するための安全の意味も含まれています。

G00(早送り、位置決め)、G40(刃先r補正キャンセル)、G96(周速一定制御)またはG97(回転数一定制御)、G99(毎回転送り)、代表的な4つのGコードを指令します。

Tコード(④~~T0101~~)

Tコードは使用する工具が取り付いている刃物台の番号とその刃具の形状補正を指令するものです。Tに続く数値4桁で指令しますが、この4桁の数値は上2桁と下2桁で意味が異なります。上2桁は刃物台の番号、下2桁は工具補正番号を表しています。通常は上2桁と下2桁は同じ数値で指令するのが一般的です。

例えばT0101とは、1番の刃物台を呼び出し、1番の工具補正を使用するというような意味になります。

例 T0101
  T ○○ △△
  ○○ ⇒ 刃物台ステーション番号(工具番号)
  △△ ⇒ 工具補正番号(工具形状補正、摩耗補正番号)

S指令(④~~~S150~)

ここでの“S”指令は、周速一定制御を使用する場合と回転数一定制御を使用する場合で、2つの意味があります。G50の後に続く“S”は最高回転数の設定用として使用していますので、別になります。

周速一定制御“G96”を指令した場合、その後に使用される“S”は周速(m/min)としての意味になり、回転数一定制御“G97”を指令した後に使用される”S“は回転数(min-1)になります。

つまり、G96S100と指令した場合は、周速100m/minになり、G97S100と指令した場合は、回転数100min-1ということになります。

S指令

コラム

周速一定制御G96(切削速度)m/min

周速とは物が1分間回転するときに刃先が進む距離で表されます。例えば同じ回転数でφ100の外径を加工するときとφ50の外径を加工する時にφ100とφ50の刃先の位置が全く同じ位置(一直線)でずれないように円周を進むとした場合、φ100の切削工具はφ50の切削工具の2倍の速さで進まなければなりません。φ50が適正条件であればφ100は適正条件の2倍の速さで加工する事になります。

当然切削条件が高すぎでの加工となり、刃具寿命に影響します。このように加工する径が変わる場合、切削速度を同じにする必要があります。この機能として周速一定制御(G96)があります。この機能は加工する径に合わせて指令した切削速度になるように回転数を調整してくれる機能です。径が大きくなると回転数は下がり、径が小さくなると回転数が速くなります。小径になればどんどん回転数が上がり、最後には機械が回せる最高回転で主軸が回る事になります。これでは素材がチャックから外れ、飛び出してしまう危険があります。

そこで、周速一定制御を使用する場合は、必ず最高回転数“G50“を指定し、周速一定制御を使用した場合でも、指定した回転数に到達するとそれ以上回転は上げないようにしなければなりません。

主軸回転命令(④~~~~M03)

 汎用旋盤で主軸を回転させる場合、回転数を決定するため変速ギヤを選択します。その後、主軸回転起動レバーをONにします。NC旋盤も同様に“S”指令で回転数を決定してもまだ回転はしません。回転レバーをONにする作業、これが主軸正転指令“M03”です。回転数を指令し、その後、M03を指令して初めて主軸は回転を始めます。 ここまで初期設定を行えば、あとは切削工具をどのように動作させるかを順に指示してあげれば加工できます。

3. 座標指令

NC旋盤の加工は2次元で表されており、機械電源投入時は“G18”(X-Z平面選択)に設定されています。直径方向をX軸、長手方向をZ軸で表し、加工原点“G54“(X0、Z0)を基準としてX、Zで各ポイントを座標という形で表します。ポイントとは、直線、円弧、テーパなどの始点と終点ということで、各直線や円弧、テーパなどの始点と終点を刃先の進行方向につなぎ合わせて刃具の動作経路を生成する際に使用します。

絶対座標と相対座標

NCプログラムを作成する際のポイント点を表す記号として絶対座標と相対座標があります。

絶対座標は、加工原点からの位置で表され、直径方向が“X”、長手方向が“Z”で表されます。相対座標はインクリメンタルとも呼ばれます。この座標指令は移動量で表され、現在の位置からどれだけ移動させるかという指令を行います。

Point!

・絶対座標・・・加工原点からの位置
・相対座標・・・現在の位置からの移動量

絶対座標と相対座標

絶対座標指令

例:X100.0

 直径方向(X軸)は加工原点から直径で100mm(X軸の移動量は50mm)の位置まで移動する。

例:Z50.0
 長手方向(Z軸)は加工原点からプラスの方向に50mmの位置まで移動する。

例:X100.0 Z50.0
 1行でX軸、Z軸を指令しているので、各軸は同時に移動します。(2軸同時に移動する)

絶対座標

相対座標指令

例:U100.0
 直径方向(X軸)は現在の位置から直径で100mm(X軸の移動量は50mm)移動する。

例:W50.0
 長手方向(Z軸)は現在の位置からプラスの方向に50mm移動する。

相対座標

絶対座標指令は“50まで移動する“、相対座標指令は”50移動する“という決定的な違いがあります。絶対座標と相対座標の使用方法を間違えると、予期しない動作となってしまいますので、違いをしっかり理解しましょう。

4. 座標計算

NC旋盤のプログラムのほとんどは、刃具をどのように動作させて加工するかを示す座標という数値がほとんどになります。この座標が正しく記されていなければ、図面通りの正しい加工ができません。ここでは簡単なC面、コーナーRの座標計算の考え方、注意点を説明します。

座標計算を行う場合、加工図面の形状に対して直線、円弧の始点、終点にポイント番号を付け、その点の座標を加工原点(X0、Z0)の位置から見てどの位置になるのかを計算します。それでは、例題の加工図を見てみましょう。

NCプログラムの座標計算

左側の加工図のワークを作成するためには、“NC旋盤の選定とその落とし穴”4項で解説していますが、使用する素材の大きさ、形状を事前に知っておく必要があります。素材のどの部分を把握してどこまで加工するのか、加工代はどれくらいあるのか、どれくらいの回転で回せるのかを決定する重要な要素となるからです。

今回の例では右図が素材図で、φ52×32Lの切断材を使用します。今回の例題のチャッキングはこのように想定しました。

チャッキングの構想図

それでは座標計算を始めましょう。ここでは座標計算に慣れるために、仕上げ加工の座標点を計算してみましょう。

初めに主軸中心線と左側端面が交差する点を加工原点G54(X0,Z0)として直線と円弧の始点、終点にポイント番号を付けます。

NCプログラム座標計算のポイント番号

ここで、図面の始点、終点にないポイントが作成されている事に注目して下さい。

上記の例では、ポイント1、ポイント2、ポイント7が該当ポイントになります。座標点を計算する場合は、刃具をどのように動作させるかをイメージし、図面上にはない点でも刃具移動に必要な場合はあらかじめポイントを作成し、座標を計算しておきます。

ポイント1は、外径(φ30)から端面部を加工する際の開始点、ポイント2は、C1の面の開始点、ポイント7はC1.5部の終点になります。

それでは各ポイントの解説をしていきます。

ポイント1

素材の端面を荒加工する始点となりますので、直径方向Xの座標値は、外径径φ52より1~2mm大きい位置に設定します。長手方向は、完成品端面がZOとなるので、0.1mm程度仕上げ代を残した位置Z0.1とします。

よって、ポイント1の座標値はX32.0,Z0.1となります。

ポイント2

C面の開始点が端面上にあると、アプローチする際に早送りで接触する事になり、よろしくありません。そこで、延長線上に仮想の点を作成しています。

考え方としては、長手方向に何mm延ばすかを自分で決めます。通常は1mm~2mm程度にしています。今回は2mmの例で作成してみます。

図面表記がC1となっています。C面とは45°のテーパを意味しますので、角度は45°になり、斜辺以外の辺の長さは1mmになります。今回は、長手方向に自分で決めた2mmの位置まで45°線を延長し、下記のような図を描くと分かりやすくなります。

C1部と延長した2mm部に三角形を考えます。45°なので斜辺ではないもう1つの辺の長さは同じになりますから、径方向の辺の長さも1mmと2mmになります。

NCプログラム座標計算方法1

つまり、ポイント2はφ30から1mm下がり、2mm下がった点という事になりますが、これでは正解ではありません。なぜなら径方向は直径指令しなければならないからです。

つまり、φ30から1mm(直径で2mm)、と2mm(直径で4mm)下がった位置が正しい正解となります。45°のC面の場合、径方向の計算は、斜辺ではない1辺の長さの2倍をプラスもしくはマイナスすれば良いという事です。よって正解のX軸座標はφ30-2mm-4mmでφ24(X24.0)ということになります。長手方向の座標は、加工原点がZ0でそれより右側はプラス、左側はマイナスとなりますので、Z2.0ということになります。ポイント2は(X24.0,Z2.0)が正解です。

ポイント3

ポイント3はC面の終点になりますので、図面に寸法が記載されています。外径はφ30と指定されていますから、径方向の座標はX30.0になります。長手方向は、ポイント2の解説にもありますが、加工原点Z0を基準に右側がプラス、左側がマイナスとなります。今回のポイント3は加工原点より左側になりますので、Z-1.0となります。ポイント3の座標は(X30.0,Z-1.0)が正解です。

ポイント4

ポイント4は円弧の始点になります。90°で直交するコーナー部にある円弧をコーナーRと呼びます。円弧の始点から円の中心までの距離と終点から円の中心までの距離が半径となり、同じになります。この図面ではR2と指示されていますので、半径は2mmになります。円の中心から加工形状に向かって垂直線を引き、その長さは円弧半径となりますので、考え方はC面と同じになります。径方向は図面指示でφ30、長手方向は図面指示の15mmから2mm手前の位置、よって(X30.0,Z-13.0)になります。

NCプログラム座標計算方法2

ポイント5

ポイント5は円弧の終点になります。ポイント4での考え方を当てはめてみると、径方向は図面指示のφ30プラス4mm(直径指令)、長手方向は図面指示で15mmとなっています。よって(X34.0,Z-15.0)になります。

ポイント6

ポイント6の考え方はC面なので、ポイント2と同じになります。ただし、今回は加工したい形状の上にポイントがありますので、わざわざ自分で延長線を作成する必要がありません。つまり、三角形は1つになるという事です。

加工図面指示よりφ50から直径指令で考えた3mmをマイナスする。長手方向は図面より15mmよって(X47.0,Z-15.0)になります。

NCプログラム座標計算方法3
ポイント7

いよいよ最終ポイントです。ここも難しく考える必要はありません。第1工程では、ここのC1.5までを加工しますので、C面をそのまま延長して加工終了となります。ただし、この時素材を把握している爪の位置を意識しなければなりません。爪との距離が少ない場合は、延長線を長くすると干渉の可能性が出てきますので、どこまで刃具を進めることができるかを事前のチャッキング検討時に把握しておかなければなりません。

NCプログラム座標計算方法4

素材がφ52なのでそれ以上延長させるのが良いでしょう。ただし、くれぐれもチャッキングと相談です。径方向は図面からφ50に延長分の三角形の1辺の長さを2倍(直径)した2mmをプラスして52mm、長手方向は図面より15mmに1.5mmプラス1mmで17.5mmになります。長手方向は加工原点Z0から左側はマイナスの領域なので、(X52.0,Z-17.5)となります。

5. 早送り(G00)と切削送り(G01)

ここまでくれば、仕上げのプログラムはできたも同然、あとは移動させる順に座標点を配置すれば良いだけです。その前に早送りと切削送りについて解説します。

早送り(G00)

加工物に接触していない移動を早く動作させるという意味で位置決めとも呼ばれています。加工しない位置への移動はG00を指令後、座標位置を指令します。

例:G00X100.0 Z50.0

直線補間(G01) ※切削送りとも呼びます。

 直線補間(G01)は名前の通り、現在の刃先位置から指令した位置までを直線で移動します。移動の際の速度は、毎回転送り(F)と呼ばれ、主軸が1回転あたり何mm移動するかという単位(mm/rev)で指令します。製品形状の輪郭に沿って刃具を移動させる、つまり、切削する箇所は直線補間G01を指令し、その後、移動させる目的の座標点を指令します。切削送りを指令する場合、送り速度も一緒に指令する必要があります。

 例:G01X50.0 Z-20.0 F0.1

6. 円弧補間(G02、G03)

円弧補間は円弧形状に加工したい場合に使用します。刃具の進行方向に対して時計回りに加工するのか、反時計回りに加工するのかでG02またはG03を選択します。注意点として、同じ形状を加工する場合でも刃具の進行方向が変わると時計回り、反時計回りが変わります。円弧切削の場合は、必ず刃具の進行方向に対してどちら回りかを決める必要があります。円弧形状に加工しますので、加工する円弧の半径値を指令し、加工時の送り速度“F”をG01同様に指令します。

例:G02X30.0 Z-10.0 R1.0 F0.1 又は G03X30.0 Z-10.0 R1.0 F0.15など

円弧補完イメージ

7. 座標点の組み込み

それでは例題の座標点をプログラム基本構成に当てはめていきましょう。基本構成は「2. NCプログラムの基本構成」で解説していますが2種類あり、周速一定制御を使用するか、しないかによりどちらを使うか決定します。今回は、周速一定制御を使用するパターンで作成してみましょう。

O1000(SAMPLE PROGRAM) 
N1 G54 M41(O.D.FINISH)
G50S2000
G00G40G96G99T0101S150M03

ここまで基本構成
ここから計算して得たポイント座標を入れる

Z10.0
X32.0Z0.1・・・・(ポイント1)
G01X-0.8F0.1・・・(加工原点※刃先r分加味)
G00X24.0Z2.0・・・(ポイント2)
G01X30.0Z-1.0F0.1・・・(ポイント3)
Z-13.0・・・(ポイント4)
G02X34.0Z-15.0R2.0F0.08・・・(ポイント5)
G01X47.0F0.1・・・(ポイント6)
X52.0Z-17.5・・・(ポイント7)
G00X100.0Z50.0
M01

これで仕上げプログラムが完成しました。

ここで、良く見てみると、G00もG01もG02、G03も指令されていない行があります。これは、モーダル“Gコード”といい、一度指令されると相対する指令があるまで指令が継続されるGコードを使用しているため、前に指令したGコードと同じGコードを使用する場合は、省略することができます。もちろん全行入力してあっても問題はありません。

X,Zの座標点も必ず1行にXとZを指令する必要はなく、前に指令した座標と同じ場合は、移動なしと判断し、省略しても良いということになります。この場合、指令された軸のみ単独で動作します。

8. まとめ

NC旋盤プログラムは、初めに加工を行うために必要な基本的な指令を与えてしまえば、あとはどのように刃具を動かすのかを「加工原点を基準として計算されたポイント点座標」を動作順序通りに指令すれば良いわけです。

ポイント点の座標計算を行う場合の注意点は、NC旋盤の径方向の軸(X軸)は直径指令であるという点を忘れずに座標計算することです。また、切削条件(回転数、送り速度、取り付けられた何番の刃具を使用するのか等)を各工程により変更しなければなりません。チャッキングを顧慮しながら切削条件を決め、刃具の適正条件になるようにしっかりと指令して下さい。

いくら適正切削条件に合わせるためとはいえ、主軸を高速回転させては素材の飛散につながる危険な状況となってしまします。安全は全てに優先する!多少切削条件を落としても、安全を優先に加工条件を決定しましょう。

NC旋盤のプログラム解説【第三弾】はこちら

NC旋盤とは?汎用旋盤との大きな違いを解説!

NC旋盤という機械をご存知でしょうか?普段の生活で見かけることはありませんが、世界中の多くの工場で稼働し続けています。

そもそも、「旋盤」って何??という方は、こちらの記事をご覧ください。

1. NC旋盤とは?

NC旋盤とは、汎用旋盤に数値制御装置(NC装置)を組み込んだ機械です。
(NC旋盤の「NC」とは「Numerical Control(数値制御)」を意味しています。)
一般的に、NC装置が付いている旋盤を「NC旋盤」、NC装置が付いていない旋盤を「汎用旋盤」と分けて呼んでいます。

実際にはNC装置だけでは作業者が機械に指示を送ることができないので、以下の3つが付くことでNC旋盤として加工をすることができます。
①NC装置・・・プログラムを認識し機械に指示を送る
②操作盤・・・作業者がNC装置への命令を行う
③サーボモータ・・・NC装置から指示を受けて機械を動かす

SC-100

また、NC旋盤を動かすためには、機械に指示を送るための「加工プログラム」を作成する必要があります。このプログラムをNC装置が認識し、各サーボモータに指示を送ることで加工を行います。

2. NC旋盤で何ができる?

2-1. 基本的な加工

NC旋盤とは汎用旋盤にNC装置が付いたものですので、基本的な加工性能は変わりません。
汎用旋盤と同じように、外径加工、内径加工、端面加工、ネジ加工、溝加工、穴加工(ドリル加工)、円錐形状のような角度をつけたテーパー加工などが可能です。

2-2. 汎用旋盤との違い

それでは、汎用旋盤との大きな違いは何でしょうか?大きな点として以下の3点が挙げられます。

自動加工

作成した加工プログラムに沿って自動的に加工を行いますこれにより、旋盤に作業者が付きっきりで作業をする必要がなくなるため、一人で複数台の機械を担当することができ、より少ない人員で工場を動かすことができます。

高精度

メーカーや機種によっても異なりますが、0.001mmの単位まで正確に位置決めを行うことができ、高精度な加工が可能ですこれにより、従来では難しかった部品の加工も可能となりました。

精度が均一

プログラムで書かれた数値通りに旋盤が加工を行うことにより、完成品の精度が均一に仕上がります。一度設定してしまえば、同一品質の物を大量に作ることができます。

3. NC旋盤の刃物台

旋盤での自動加工を考えたときに次にネックとなるのが「刃物台」です。

従来の汎用旋盤では、刃物台に付けられる工具本数が4本ほどしかなく、加工工程が多く、工具が多く必要となる製品を加工する場合は、人の手で工具の付替えを行う必要がありました。

NC旋盤のメリットである自動加工を生かすためには、工具付替え作業を無くす必要があり、様々なタイプの刃物台が作られました。

多くの種類がありますが、よく採用されている刃物台を紹介します。

タレット型

タレットと呼ばれる大きな円筒状になった台の周囲に工具を並べて配置したタイプです。多くのNC旋盤で採用されてり、特徴としては、円筒状に工具を配置することで、多くの工具を取り付けることができます。
また、タレット型での加工には強い剛性が求められるため、タレットの設計には様々な工夫が施されています。

タレット型刃物台

くし刃型

水平な台に工具を並べて配置したタイプです。工具が横に並んでいるため、工具の割り出し時間がいらず、繰返し精度が高いという特徴があります。ただし、工具が並んでいるため、加工時の干渉が起こりやすいという点に注意が必要です。

くし刃型刃物台

フラット型

汎用旋盤と同じ形状で、一つの面に一つの工具を付け、刃物台全体を回転させて工具を切り替えるタイプです。芯出しの作業を簡単に行うことができます。
刃物台の説明で紹介したように、セットできる工具本数が少ないため、加工途中で工具の付替えが必要となる場合があります。
※4角のものが主流ですが、8角や多角型のフラット型刃物台もあります。

フラット型刃物台

4. まとめ

機械での加工を行う上で「自動化」というのは大きなキーワードになります。特に大量生産するような製品の場合にとても大きな力を発揮します。

汎用旋盤からNC旋盤へ移り変わりは、製造業の大量生産化への大きな一歩と言えるでしょう。

「ポイントを抑えると難しくない?!」NC旋盤のプログラム【第一弾】

1. NCプログラムとは

NCとはNumerical Control(ニューメリカルコントロール)の略で、数値制御という意味になります。

NC工作機械は、数値制御で動作する機械なので、この機械をどのような条件でどのように動作させるかを、記号と数値を使用して記したものを、NCプログラムといいます。

多くの記号を、あるルールに沿って羅列するので専門の知識が無ければ作成すること、読み解くことは難しいと思われていますが、ルールさえ理解できればそれほど難しいものではありません。

NC装置メーカーによりいつくかの種類があり、その中でも旋盤系、マシニング系に分かれており、若干の違いがあります。代表的なものとしてファナック、メルダス、ヤスナック、シーメンス、ハイデンハインなどがあります。使用する機械がどこのNCを搭載しているかでプログラムの内容も変わってきますので、確認が必要です。

ここではファナック社製NC旋盤のプログラムを例にしてプログラムをわかりやすく解説します。

ファナック操作盤
ファナック操作盤

2. Gコード、Mコードについて

NCプログラムには、GコードとMコードと呼ばれる記号があります。基本コードは0~99番までになっていますが、機械の構成により3桁まで使用されている場合もあります。

2-1. Gコード

Gコードは、準備機能と呼ばれており、アドレスGに続く数値によって表され、主に加工に関する命令に使用されます。

Gコードには指令すると1回のみ有効なもの(ワンショット)と、同一グループの他のコードが指令されるまで有効になるもの(モーダル)があります。同一グループと言っても難しく考える必要はありません。例えば、“G00早送りで動作しなさい”と“G01切削送りで動作しなさい”では、お互い同時に指令を守ることができません。“G02時計回り円弧補間”と“G03反時計回り円弧補間”を同時に指令しても同時に動作することはできません。

このように動作指令を打ち消すような相対する指令は同一グループになっています。

 標準的なGコードはG00~G99まで約70ありますが、その全てを使用する訳ではありません。その中でも良く使用されるものだけをピックアップして覚えておけばプログラムを作成することができます。


下記によく使用するGコードを記します。

G00(位置決め、早送り)
G01(直線補間、切削送り)
G02(円弧補間、時計回り)
G03(円弧補間、反時計回り)
G04(ドウエル) 
G28(リファレンス点復帰、機械原点復帰)
G40(刃先r補正キャンセル)
G41(刃先r補正左)
G42(刃先r補正右)
G50(主軸最高回転数設定)
G54(ワーク座標系1選択)
G92(ネジ切りサイクル)
G96(周速一定制御)
G97(周速一定制御キャンセル、回転数一定)
G98(毎分送り)
G99(毎回転送り)

早送り位置決め
直線補完、切削送り

70程ありましたが、最低限必要なものは上記の16程度で済みます。

注意点としてGコードは同じグループ以外であれば1行に複数指令することができます。プログラムを簡単にするための複合固定サイクルというGコードも存在しますが、ここでは、必要最低限のものを抽出しています。

旋盤加工イメージ

2-2. Mコード

Mコードは、補助機能と呼ばれており、アドレスMに続く数値によって表され、主に機械を動作させる指令に使用されます。

例えば“主軸を正転で回転しなさい”という命令は“M03”になり、“切削油を吐出しなさい”という指令は“M08”になります。Mコードは機械を動作させる指令なので、NC装置というよりは、機械メーカーによってつくられるもので、指令する動作の番号は、機械メーカーによって異なるので注意が必要です。同じファナック製NCでも機械メーカーが違う場合は、同じ番号のMコードでも動作する機器が違うという事になります。

標準的なMコードはM00~M99まで約80ありますが、Gコードと同じようにその全てを使用する訳ではありません。その中でも良く使用されるものだけを抽出して覚えておけばプログラムを作成することができます。


下記によく使用するMコードを記します。機械メーカーにより内容が変わってきますので、ここでは中村留精密工業製のNC旋盤での一例を記します。

M00(プログラム停止)
M01(オプショナルストップ)
M03(主軸正回転起動)
M04(主軸逆回転起動)
M05(主軸回転停止)
M08(切削油吐出)
M09(切削油吐出停止)
M10(チャック閉)
M11(チャック開)
M20(固定エアブロー吐出)
M23(チャンファリング有効)
M24(チャンファリング無効)
M30(リセット&リワインド、プログラム終了)
M41(主軸選択)
M86(主軸固定)
M87(主軸固定解除)
M88(ミーリング正回転)
M89(ミーリング逆回転)
M90(ミーリング回転停止)
M91(C軸選択)
M98(サブプログラム呼び出し)
M99(メインプログラム復帰)

80程あったものが最低限必要なものは22程度で済みます。注意点としてMコードはプログラム1行に1つのみ指令出来ます。1行にいくつものMコードを指令することはできません。

3. 座標系(機械原点と加工原点)

NC旋盤には2つの基準となる原点があります。1つはその機械の基準になる機械原点、もう1つはプログラムを作成する人が自由に決めることができる加工原点です。

NC旋盤加工イメージ

プログラムを作成する上で重要になるのは加工原点をどこに設定するかということです。通常は加工端面と主軸中心が交わる点を加工原点に設定します。加工原点の位置は、X0、Z0という座標で表され、X軸は使用する切削工具の刃先位置から主軸中心までの距離を、Z軸は機械原点から加工端面までの距離を形状補正X,Zに設定します。この点を加工原点として刃具を動作させています。通常加工端面をZ0と設定するので、切削を行う際は、Z軸マイナス側に向かって加工します。

NC旋盤における機械原点と加工原点
機械原点と加工原点

サブスピンドル側での加工は、第2工程の加工原点“G55”を設定し、ここを基準にして座標を求めます。機械のZ軸のプラスマイナスはメイン主軸での考え方と変わらず、1つの刃物台で左右の主軸の加工を行うため、Z軸方向のプラスマイナスは反転した考え方になります。つまり、サブスピンドル側で加工する場合のプログラムは、Z軸プラス側に向かって加工します。X軸のプラスマイナスはメイン主軸、サブ主軸共同じになります。

サブスピンドル付きNC旋盤の例

4. まとめ

今回はNC旋盤プログラムのGコード、Mコード、座標系について解説しました。沢山あるように思えるGコード、Mコードは、必要最低限に絞ればかなり少なくなることがお分かり頂けたと思います。

また、加工原点は、NCプログラムの基準となる大変重要な位置です。後に図面に目印を付けておくと良いでしょう。加工原点が変われば、せっかく作成したNCプログラムが全く異なるものになってしまいます。NCプログラムは作成者の思いが機械を段取り、加工する側に正しく伝わることで正しい動作ができるようになります。

次回は、NCプログラムの基本構成、絶対座標と相対座標、座標計算について解説します。

NC旋盤のプログラム解説【第二弾】はこちら

NC旋盤の選定とその落とし穴

1. NC旋盤の種類

NC旋盤と言っても様々な機種がありますが、大きく分けると縦旋盤と横旋盤があります。その中でも主軸が2つ搭載されている機械を2スピンドル旋盤と言い、対向2スピンドル旋盤、平行2スピンドル旋盤と呼ばれています。

1-1. 縦旋盤

縦旋盤は、底面に主軸、上面に刃物台を垂直に配置した機械で、素材を縦にチャッキングして地面に対して垂直に加工するので重力に強い特徴があります。そのため横旋盤で加工できないような大径で重量のあるワークなどの加工に適しています。

縦旋盤
縦旋盤

1-2. 横旋盤

横旋盤は地面に対して平行に主軸が配置されており、水平方向に加工します。素材を横向きにチャッキングしているので、切削切粉の排出性が良く、バー材を使用した加工も可能です。

横旋盤
横旋盤

1-3. 平行2スピンドル機

1工程2工程の加工を1台で行える2スピンドル旋盤も主流となっています。

平行2スピンドル機は2つの主軸を平行に配置されており、機械の横幅を小さくすることができます。しかし、1工程、2工程のワーク受け渡しはローダーで行うため、位相精度に影響が出るため、位置決め治具等が必要になる場合があります。

平行2スピンドル
平行2スピンドル

1-4. 対向2スピンドル機

対向2スピンドル機は、2つの主軸を対向に配置した機械で、1.2工程のワークをダイレクトに高精度で受け渡すことができます。1.2工程の加工ワークを横から見ることができるため、プログラムの確認動作など視認性が良く、操作しやすい構造になっています。

対向2スピンドル
対向2スピンドル

2. 確認すべきポイント

NC旋盤を選定する際に重要な点は多々あります。せっかく新しい機械を導入しても「こんなはずではなかった・・・」とならない様にしっかりと確認する必要があります。

まず一番に確認する事は、加工したい対象ワークが加工できるかという点です。機械の「振り」と「心間」が加工対象ワークに適しているかどうかで選定する機械が大きく変わってきます。

2-1. 振り

振りとは、ベッド上の振りとカバー上の振りの2つの振りがあります。ベッド上の振りとは、装着できる加工物の最大径の目安となります。実際にはカバー上で振れる径の方が小さくなりますので、カバー上の振りが加工できる最大ワークとなり、機械の大きさの目安となります。

振り(加工物の最大径の目安)
振り(加工物の最大径の目安)

2-2. 心間

心間とは、主軸端面から心押し台先端までの距離のことをいい、加工できる最大長さの目安となります。ただし、実際には主軸にチャックと呼ばれる素材を把持する治具を取付けるため、心間長さと加工できる長さは変わります。加工できる最大長さを表す指標であり、振りと同じく機械の大きさの目安となります。

心間(主軸端面から芯押し台先端までの距離)
心間(主軸端面から芯押し台先端までの距離)

2-3. その他の確認ポイント

NC旋盤を選定する上で、振り、心間は重要な項目ですが、それ以外にも代表的な項目として下記が挙げられます。

■対象ワークの範囲

■目標加工時間

■加工範囲・図面公差・幾何公差の確認

■チャッキング

■機械サイズ

■生産個数

■主軸、ミーリング最高回転数

■工具本数

■機械ストローク

■モーターパワー・推力

■搭載オプション

■価格

生産個数、目標サイクルタイムによっても生産効率の良い機械を選定する必要があります。もちろん機械の設置面積も検討しなければなりません。各項目をしっかりと検討することが大切です。

大は小を兼ねるという言葉がありますが、工作機械の場合、機械が大型になれば設置面積、アイドルタイム、価格などマイナスに働く要素がありますので、その加工物に合った機械選定が生産性を向上させるポイントとなります。

3. 機械選定の落とし穴

振りと心間を確認して加工対象ワークが加工できる大きさの機械を選定しても安心はできません。

■振りは満足していてもストロークができない。

■チャックサイズが大きくなるとツール隣接干渉が発生し、工具搭載本数が少なくなる。

■回転数不足により適正な周速で加工できない。

■モーターパワー不足により低速回転領域でのトルク不足

などなど導入後に使用してみて初めて発覚する問題も多々あります。

ストロークを確認している様子
ストロークを確認している様子

【2. 確認すべきポイント】に挙げた項目をしっかりと検討し、対象ワークが加工できる仕様の機械であることを確認することが大切です。工作機械メーカーに質問、選定してもらうことも良いでしょう。

それでも心配な場合は、メーカーによるテスト加工などを行ってもらい、発注前に対象ワークが加工できるのか、実加工を見せてもらうことも選定の一つの案です。

4. チャッキングについて

NC旋盤を使用して加工する場合、最も重要と言っても過言ではないのがチャッキングです。どれだけ精度の良い機械を導入してもチャッキングが悪ければ宝の持ち腐れになってしまいます。

ワークのチャッキング
ワークのチャッキング

対象ワークの素材をどのようにチャッキングするかで切削条件、加工精度、サイクルタイム、工程集約の内容が変わります。加工対象ワークの素材を加工箇所、加工精度、加工工程に合わせて“どこを把握するのか”、“どれくらいの圧力で把握するのか”、“干渉はないか“、”精度に影響は出ないか”、をしっかり検討し、チャック選定を行う事も大切です。

一般的にバー材であればコレットチャック、切断材なら三方締め油圧チャックを選定しますが、三方締めチャックでも爪との干渉や把握力による変形などが発生しやすくなります。鍛造素材・鋳造素材、異形素材などはデザインチャックといい、特殊な構造のチャックを選定する場合もあります。加工精度、加工箇所に合わせて加工精度や変形の影響が少ないチャックを選定することが大切です。工作機械メーカー、チャックメーカーとしっかり打合せし、チャック選定を行いましょう

5. まとめ

NC旋盤の選定について簡単に解説しましたが、今回挙げた事例は必ず押さえておかなければならない項目になります。導入後に落とし穴に落ちない様に事前にしっかり検討し、メーカーと打ち合わせを行い、正しい機種選定を行って生産性を向上させる機械を導入しましょう。

複合加工機の正しい選び方は?最初に確認するべき3つのポイントを紹介

「複合加工機」を導入しようと思った時に、どんな機械を選べばよいか分からないと言ったことを良く耳にします。ここでは、どのような複合加工機があり、どのようなメリットがあるのか、最終的にどう選定すれば良いかを解説します。

1. 複合加工機の種類

複合加工機とは、工具の自動交換機能(タレット形を含む。)を備え,工作物の段取り替えなしに、フライス削り、旋削、研削などの多種類の加工のできる数値制御工作機械のことです。

例えば、ターニングセンタベース複合加工機の場合は、NC旋盤にマシニングセンタの機能を追加した複合加工機のことを指し、マシニングセンタベース複合加工機は、マシニングセンタにNC旋盤の機能を追加した複合加工機のことを指します。最近では、3Dプリンターの機能や研磨機の機能、レーザー溶接機能を備えた複合加工機も登場しています。

2. 種類による違い

それでは、ターニングセンタベース複合加工機、マシニングセンタベース複合加工機はどのような違いがあるのでしょうか。

2-1. ターニングセンタベース複合加工機

NC旋盤をベースにマシニングセンタの機能(ミーリング機能)を付加した工作機械であり、ベースとなる機械はNC旋盤なので円筒物の加工が得意です。
旋盤用主軸が装備されている事により、加工物を高速回転させることができ、旋削の加工負荷にも十分耐えうることができます。旋削加工が終了後は、刃物台に付加したミーリングユニットにより工具を回転させることができ、旋削加工が終了した後にそのままミーリング加工を行うことができます。また、ミーリング加工時は、旋盤の主軸は角度割り出し軸として動作でき、0.001mm単位の高精度位置割り出しが可能です。

ミーリング加工例
ミーリング加工

2-2. マシニングセンタベース複合加工機

マシニングセンタをベースにNC旋盤の機能を付加した工作機械であり、素材取付テーブルに回転機構を持たせることにより旋削加工が行えるようにした機械です。
もともと回転テーブルは、位置割り出し用に開発されたものであり、旋削加工に必要な回転数や加工負荷に耐えられる構造ではなく、簡単な旋削加工ができるという点以外はマシニングセンタそのものになります。ターニングセンタベース複合加工機と比べ、テーブルが大きく加工範囲が広いため、大きい素材の加工に最適であり、素材セットは治具を使用することにより素材把握時のひずみが生じにくい利点もあります。

3. 選定時のポイント

それでは、どちらの複合加工機が良いのでしょうか?ポイントごとに確認していきましょう。

3-1. 旋盤加工メインか、マシニング加工メインか

まず初めに、加工したい製品の工程が旋盤加工メインとなるか、マシニング加工メインとなるかにより判断します。
旋盤工程が多いのであれば、ターニングセンタベース複合加工機、マシニング工程が多いのであれば、マシニングセンタベース複合加工機をそれぞれ選ぶのが一般的です。

3-2. 加工物の固定方法

加工物を固定する際に治具によるクランプが必要か、またはチャックで把握できるかという点も重要になります。いくら旋盤工程が多くてもチャックによる把握代がないような素材形状であれば治具を使用して取付け、マシニングセンタで加工する他ありません。

チャックの把握イメージ
チャックの把握

3-3. 工程集約できるか

選定の上では、作業工程をいかに減らせるか、も大きな決め手にもなります。
最近の傾向では、従来マシニングセンタで加工していた製品をターニングセンタベース複合加工機で加工したいという事例が増えています。大きな理由の一つとして、ターニングセンタベース複合加工機は、対向2主軸型が主流であるため、1工程の加工が終了した後、対向するもう一つの主軸に自動的に受け渡すことで全面加工が可能となり、素材の着脱作業を省略することができる、という点があります。

対向2主軸型
対向2主軸型

一方、マシニングセンタベース複合加工機は、自動受け渡し機能がなく、素材を取り付けた基準面(素材取付面)は加工できないため、必ず2工程への素材着脱が発生します。しかし、最近では同時5軸制御マシニングセンタを使用して加工方法を工夫し、1工程でほとんどの加工を終わらせてしまうような工法も採用されています。ターニングセンタベース複合加工機で振れないような大きいワーク、異形状でクランプが難しいワーク、回転バランスが悪いワークなどの加工に最適な機械です。

4. まとめ

複合加工機を選定する際に重要になる点、それは加工内容に合っているか?工程集約が可能か?ということになります。
加工内容が合っていなければ機械性能を十分発揮できませんし、工程集約ができなければそれはNC旋盤、またはマシニングセンタを購入したと同じになってしまいます。
どこの範囲までを工程集約するのか、機械仕様は合っているのか、加工精度が維持できるのか、などを検討し、どちらの複合加工機が良いのかを最終判断します。2つのタイプの複合加工機のどちらが良いか方向性が決定したら、より細かな機械選定へと進みます。
次回はさらに細かい選定内容についてご紹介いたします。

複合加工機とは?旋盤との違いを徹底解説

機械加工によって製作される部品のほとんどは、数種類の工作機械を使用して作られています。
複合加工機とは、この数種類の工作機械を使用せずに、1台の機械で数種類の加工を行う事を目的として設計された機械であり、工作機械の長い歴史の中で工程集約を目指し続け、たどり着いた先が複合加工機です。

1. 複合加工機とは

複合加工機とは、工具の自動交換機能(タレット形を含む。)を備え,工作物の段取り替えなしに、フライス削り、旋削、研削などの多種類の加工のできる数値制御工作機械のことです。

機械としての最も大きな特徴は、複合加工機一台で複数工程の加工を終わらせることができる点です。

多くの場合、一つの部品を素材から完成品にまで仕上げるには、旋盤とマシニングセンタなど、最低2つの工作機械を用意する必要がありましたが、複合加工機はそれらすべての工程を一台で済ませることができます。

複合加工機イメージ図
複合加工機とは

2. 旋盤、NC旋盤との違い

旋盤(汎用旋盤)

旋盤とは、加工したい素材を回転させ、刃物をあてることにより円筒形状に削り出す機械のことを言います。なかでも汎用旋盤と呼ばれるものは、機械の操作を職人が感と経験をもって手動で動作させるものです。
汎用旋盤についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

NC旋盤

NC旋盤とは、汎用旋盤にNC装置を搭載し、プログラムにより自動で動作する旋盤を指します。
NC旋盤についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

複合加工機

NC旋盤にフライスの機能を搭載し、様々な加工ができるNC旋盤を複合加工機と呼び、活用の幅が広いのが複合加工機の最大の特徴です。

3. 複合加工機のポイント

工程集約・人件費の削減

複合加工機を使用しない場合、素材から完成品を作るには何台かの機械を使って加工する必要があり、そのたびに、素材の取付、取り外し、運搬などの作業を作業者が行う必要がありました。

複合加工機では、それらすべてを一台で行うため、作業者による素材の着脱作業や工程間の素材移動がなく、素材を一度セットすれば完成品に仕上がるため、作業者への負担を軽減できます。

省スペース

工程に合わせた工作機械をいくつも持つ必要がなくなるので、機械台数を減らすことができ、工場のスペースを有効活用することができます。工場全体としての生産能力を上げることができます。

高品質

加工精度の面では、取付、取り外しの回数が多くなればなるほど精度が劣化するといわれており、取付の際の位置決めが重要であり、加工品が工程間を移動する事は加工精度を低下させる要因にもなります。これまでは工程ごとに素材の取付・取外しを行う必要があり、わずかなズレが発生する可能性がありましたが、複合加工機一台で加工を行うことで、加工精度低下の原因となる取付・取外しの工程を省くことができ、完成品の精度を均一に保つことができます。

4. 代表的な加工ワーク

複合加工機で作られる部品をいくつか紹介します。
これらの部品は全て複合加工機一台で完成させることができます。

ドライブシャフト

ノーバックハウジングイメージ図
ドライブシャフト

自動車のドライブシャフトです。
従来の加工工程は、旋盤加工(1工程、2工程)+マシニングセンタ+ホブ加工(2工程)で完成します。

ポンプカバー

ポンプカバーイメージ図
ポンプカバー

オイルポンプの蓋です。
従来の加工工程は、旋削加工(1工程、2工程)+マシニングセンタ(1工程、2工程)で完成します。

ノーバックハウジング

ドライブシャフトイメージ図
ノーバックハウジング

航空機に使われる部品です。
従来の加工工程は、旋削加工(1工程、2工程)+5軸マシニングセンタ工程で完成します。

5. まとめ

複合加工機一台で全ての加工を完了させられるのは大きな魅力と言えます。複合加工機を活用することで、作業効率アップ、工場スペースの有効活用、生産性向上など大きなメリットがあります。

もし、NC旋盤やマシニングセンタを持っていて、工程集約して人件費を抑えたい、工場の機械増設スペースがない、製品の精度を向上したい、などの課題を抱えているのであれば、是非とも複合加工機を導入し、課題を解決してみてはいかがでしょうか。

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旋盤とは? 加工対象から機械構成などを解説!

「旋盤」という機械をご存知でしょうか?我々の日常生活で目にすることは少ないですが、身の回りのあらゆる製品を生み出す重要な役割を担っています。この記事では、旋盤の加工対象から機械構成などを解説します。

1. 旋盤とは

旋盤とは金属を加工する工作機械で、加工したい素材を回転させ、刃物をあてることにより、円筒形状に削り出す機械のことを言います。簡単にイメージするとリンゴの皮むきを想像してみてください。リンゴをゆっくり回転させながら包丁で皮を薄くむいていく感じです。リンゴが素材、回転させるものが主軸、包丁に相当するのがバイトと呼ばれる切削工具です。回転している素材に切削工具を主軸に平行に動かしながら押し当てて円柱形状にする機械のことを言います。

リンゴの皮むきと旋盤での切削イメージ
リンゴの皮むきと旋盤での切削イメージ

2. 旋盤の種類

旋盤の種類

旋盤にはいくつか種類が存在し、加工物の形状や大きさによって使い分けられています。現代ではNC旋盤が主流で、作成したプログラムに沿って加工を自動で行うことが多いですが、それまでは手動操作による旋盤での加工が行われていました。

汎用旋盤(普通旋盤)

すべての操作が手動で行われる、最も標準的な構造の旋盤です。製品の仕上がりが作業者のスキルに大きく左右されるため大量生産向きではなく、特注品や試作品の加工などの少量生産に利用されます。

NC旋盤

汎用旋盤にNC装置(数値制御装置)が組み込まれた旋盤です。加工プログラムを作成する必要がありますが、機械が自動で加工を行ってくれるため精度の安定した製品を誰でも作ることができます。

卓上旋盤

作業台の上などに据え付けて使用される小型の旋盤です。汎用旋盤を使うには小さすぎる製品の加工や、大きな機械の設置が難しい環境などで使用されます。

正面旋盤

大型の主軸が作業者の正面を向いている旋盤です。チャックの代わりに面盤という円状の部品が取り付けられており、主に径の大きな製品の加工に用いられます。

立旋盤

主軸が真上を向き、垂直方向についている旋盤です。製品を水平に回転させて加工するので、重量があるものでも安定した加工が可能です。

タレット旋盤

旋回する刃物台(タレット)を汎用旋盤に取り付けた旋盤です。タレットを回転させて複数の切削工具の切り替えを行うので、工具交換が不要になり加工時間を短縮できます。

3. どんなものを加工するのか

旋盤は円筒形状の加工に特化した工作機械です。主に円柱、円錐の加工を行います。その他には、穴あけ加工、ネジ加工などもできます。具体的にどんな部品の加工に旋盤が使用されているかと言うと、身近にあるほとんどの製品には旋盤で加工された部品が使用されています。自動車部品、航空機部品、建設機械部品、医療部品、エネルギー関連部品、家電住宅部品、半導体製造装置部品など旋盤を使用して加工した部品を使用して組み立てられた製品がほとんどです。鉄、アルミ、ステンレス、真鍮、鋳物、樹脂などありとあらゆる素材を加工することができます。

複合加工機で作られるもの
複合加工機は旋盤に機能がプラスされたものです

4. どんな加工ができるのか

旋盤は素材を回転させて刃物(バイト)を押し当てて加工します。使用するバイトの種類や動かし方次第でいろいろな加工に対応でき、一般的には、外径加工、内径加工、端面加工、ネジ加工、溝加工、穴加工(ドリル加工)、円錐形状のような角度をつけたテーパー加工、円弧加工などができます。この豊富な加工方法を組合せて1つの部品を完成させていきます。加工工法をどんな順番でどんなバイトを使用して加工するかを考えることを工程設計と言い、工程の順番に沿ってバイトを変更し、動かし方を変えながら加工を進めていきます。操作する職人の技が必要ではありますが、単品の短納期対応や加工品の細かな修正などに重宝されています。

5. 機械の構成

旋盤はベッド、主軸台、刃物台、心押し台と、大きく分けて4つの主要部品で構成されています。簡単に説明すると、素材を把握し、回転させる主軸台。バイトを取付け、加工したい形状に動作させる刃物台。長尺加工物をサポートする心押し台。最後に3つの台を取り付けるベースになる頑丈な土台をベッドと呼びます。

NC旋盤の場合は、基本構成は同じで、さらにNC装置、操作画面が付属されています。

旋盤の基本構成図
旋盤の基本構成

5-1. ベッド

ベッド

ベッドとは、主軸台や往復台、心押し台などを支える機械の基礎となる土台になる部分で、振動や熱に強い構造になっています。基礎となる土台が弱いとその上に搭載される主軸台や往復台が移動時に変形し、精度の良い加工ができなくなるため、素材選定、構造など最先端の技術力をもって設計されています。

5-2. 主軸台

主軸台

主軸台とは、加工物を回転させる部分であり、ベアリング等でAssyした主軸が搭載される部分のことであり、ベッドと共に主軸のベアリング構成、バランス、主軸台の剛性も加工精度につながる重要部位の一つです。

5-3. 往復台

往復台

往復台とは、切削工具を搭載する刃物台を乗せた台であり、ベッド上の長手方向に移動させることができます。エプロン、サドル、横送り台、刃物台から構成されています。

5-4. 心押し台

心押し台

心押し台とは、主軸台と対向のベッド上に搭載されている台であり、長手方向に移動できる構造になっています。加工物をサポートするための装置であり、先端部を変更する事により、ドリル加工などにも使用されます。NC旋盤ではテールストックと呼ばれています。

6. まとめ

工作機械はマザーマシンと呼ばれ、機械を作る機械と言われています。その中で旋盤は、機械加工の中で一番良く使用されている工作機械です。旋盤そのものは生活の中ではほとんど見かけることはありませんが、私たちが日常生活で利用している多くの製品には、工作機械から生み出された部品が使われています。身の回りで円筒形状の部品があったら、それはもしかしたら旋盤によって作り出された物かもしれません。

「工作機械の仕事にはドラマがある」新メディア【留のうらがわ】への想い

2020年10月より、中村留の新しい情報発信メディア【留のうらがわ】がスタートしました!

今回はメディア発足人である専務の中村にインタビューしました!インタビュー担当は中村留のゆるキャラ「トメマル」が担当しますー!

なぜこのメディアを立ち上げようと思ったのですか?
工作機械は「機械を作る機械」であり、別名「マザーマシン」と言われています。このマザーマシンが部品を作ることで、自動車・航空機・建機・スマートフォンなど多種多様な産業に携わらせて頂いてます。よく「縁の下の力持ち」と呼んで頂くことが多いんです。そう言われることはありがたいことなんですが、「縁の下」にいるためか工作機械メーカーの仕事内容やプロセスは多くの方に中々伝わらないなと思っていました。工作機械をつくるのにはドラマも名場面もあり、とても面白いのになぜ伝わらないのか、なぜ注目されないのか考えていました。
製品の部品を作り出すマザーマシン
製品の部品を作り出すマザーマシン
たしかにそんなに目立つイメージはないかもしれませんね。その問題意識とこのメディアがどう繋がっているんですか?
2020年の3月からTwitterを始めて我々の普段やっていることを文字にすると、ありがたいことに多くの方に興味をもってもらいました。その時に気付いたのは「我々が伝えきれていないだけで、多くの方は工作機械メーカーの仕事に関心を持っていただいている」ということです。そこで中村留という工作機械メーカーの「うらがわ」をご紹介して、よりこうしたものづくりを身近に感じて頂ければと思い、このメディアを発足しました。
なるほど!名前も留のうらがわですもんね!
そうなんですよ。名前はチームからこれだけの案が出てきました。考えてるうちに裏側というキーワードが出てきて、決めたという感じです。Youtubeでも舞台やテレビ番組の楽屋風景や準備の様子が特集されてるとついつい見てしまう経験があったので、そうした舞台裏が覗けるメディアにしたいと思います。
"うらがわ"の他の名前候補
メディアの名前候補
ちょっと次の記事を見させて頂きましたが、個人的に面白かったです。これは誰が書いているんですか?
社内に取材する記者さんの役割をするチームを作りまして、そのメンバーが「社内で面白いことやってる」と嗅ぎつけて取材に行く形で記事を書いています。私も取材班に入ったりしています。
実際に取材してみてどうですか?
やはり本職の記者さんは仕事でもお会いするんですが、本職の方々のスキルはすごいなと率直に思うことが多いですね。
また、第三者目線で社内を見ると結構面白い発見が多くありました。リニューアルした食堂や資格保持者が多いことも社内では日常なんですが、客観的にみるとユニークなポイントなんだなと勉強にもなりました。
新設された中村留の厚生ホール
新設された厚生ホール
今後どんな記事が見られますか?
今後は社内でのユニークな取り組みやこだわりのポイントを社員の方にどんどん取材していきたいですね。また一緒にお仕事させていただいている企業様ともコラボして記事を書かせて頂くことも検討しています。
直近では「Nakamura-Tome Online」というweb展示会が3回目の開催になります。これもリアルの展示会と同じく準備に熱が入る一大イベントなので、その「うらがわ」に迫りたいと思います。
中村留WEB展示会
近日開催されるWEB展示会

【冬季オンラインインターンシップ】開催します!

オンライン冬季会社説明会の
開催が決定しましたので、お知らせいたします!


応募フォームはこちら

■開催日時:2020/12/22(火)13:30-16:30
■応募締め切り:2020/12/16(水)
■参加決定通知:2020/12/17(木)
■定員人数:10名

■プログラム:会社概要説明
        オンラインでも迫力満点!ショールーム(工場見学)ツアー
        先輩社員からの業務紹介&インタビュー
        グループワーク
        振り返り

 心より感謝申し上げます

コロナ禍の中いまさらながらにお客様の有難さを知る一年となりました。皆様に取りまして2021年が一層よくなりますように心よりお祈り申し上げます。

12月30日より1月4日まで冬季休暇を頂いております。